小学生時代、ここの近くが祖父の家でここらを探検していた。
いつもは渡ろうなんて考えなかったのですが、その日は何故かどうしても対岸に渡りたくなって、ズボンを上げ、靴下を脱ぎ捨て、一歩、また一歩沢に足を入れていく。
対岸にはなにがあるのだろう?ワクワクが止まらず、気分はさながら冒険者だった。
ドラクエのBGMが頭に流れる。
沢の真ん中あたりについた時、足を何者かに掴まれ、引きずり倒された。なにが起こったのか、その時の自分はわからなかった。だが確かに一つわかったこと、それは、もう一人、目の前に子供が立っていたことだ。
その子供は、倒れ沢の流れのまま流される自分を見下ろすように見つめていた。
その子供の顔がやけに白かった事、今でも鮮明に覚えている。なんてことない夏、水の中だというのに皮膚が熱かった。
いままでの思い出が、走馬灯のように脳裏に明滅する。あぁ、死ぬんだな。子供ながらに自覚した。最後に、最後に、男手一つで育ててくれた父に、感謝を伝えたかった。
気づくと、私は祖父の家の寝室にいた。外は先ほどとはうってかわり激しい雨が窓を打ち付けていた。
嫌な夢だった、そう思いながら顔を上げる。すると窓の外に、夢で見た青白い顔の子供がいた。私は驚き、腰を抜かしてしまった。子供が窓越しに何かいっている。
耳を澄まし聞こうとする。タスケテ……クルシイ……アツイ……ツメタイ……イキ……デキナイ
そう言い残すと子供は消えてしまった、その事を祖父に話すと、祖父は重々しい表情をし、こんな話をしてくれた。
昔、あの沢の近くで親子が焼身心中をし、親は死亡、娘は沢に飛び込んだ後溺れ死んだそう。本当か嘘かわからないが、あの子供は確かに火傷をしていた。そして、あの子供と全く同じ場所に、私も火傷をした。