もう何年も前にたまたま通り掛かったセリーヌ。
心霊スポットとして有名だと言うこともあり、折角の機会だからと中を散策してみることにした。
当時の彼女は酷く嫌がった為、独りで散策することになったのだが、昼間なのに殆ど光が差し込まずかなり薄暗かったので、その当時のスマホでライトを照らそうとムービ モードでライトを起動したのだが、2、3秒撮影していたら勝手に落ちてしまった。
仕方なくもう一度起動してみるが、また同じようにすぐに落ちてしまうので、ライトを起動することは諦めることにした。
この時点でも既にそこそこの薄気味悪さを感じたのだが、このまま引き返したとあっては笑い話にもならないので、そのまま散策は続けることに…
なるほど、確かに有名な妊婦の肖像画がそこかしこに描かれている。
この絵に関しては、某動画サイト等でも見掛けていたので、特に嫌な感じも無かったのだが…
ふと、奥の方で扉の閉まる音が定期的に聴こえてくることに気付く。
そこは扉に小さな穴が空いてる以外は他の部屋とあまり代わりの無い部屋だったのだが、風も無いのに、定期的に扉が秋、そして閉まると言うことを繰り返していた…
さすがに嫌な気持ちにはなったのだが、己を奮い立たせ、部屋に入ってみることに。
部屋の中程まで進んだ時。
後ろでバタンと音がして扉が閉まったのだ。
不意に振り替えると、あることに気付いた。
この部屋の扉、内側のドアノブが壊れていて無くなっていたのだ。
つまりドアを開けるには、先程あった小さな穴から、反対側のドアノブを回すしか方法が無いのである。
次第に速くなる鼓動…
あのときばかりは初めて心霊スポットでの恐怖を感じた。
穴から手を伸ばした時に、不意に反対側から誰かの手が自分の腕を掴みに来るのではないか…!
そんな事が頭をよぎってしまったが、勇気を出してドアノブを回さなければ部屋からら出られない。
どうにも嫌だがやるしかないのだ。
恐る恐る手を穴に差し込むとすぐに反対側のドアノブを回した。
…
…
…!
特に何事も無く、ドアを開けるとその部屋を後にする。
下への階段を下り駐車場も観て回ったが、これといって何もなかったので、『もう十分だな…』とわざと声に出し、その場を後にした。
帰り道の道中、いくつか起きた不思議な事を思い出しながら帰ったことを今でもよく覚えている。
それから数時間した後…。
出来すぎた様な作り話の様に聞こえる話だが、酷い目眩と吐き気に突如襲われた。
自分は寺に勤めて居たことがあったので咄嗟に般若心行を唱えたのだが、数十分したら不思議と楽になった。
思い込みによるものなのかどうかは定かでは無いが、あれ以降心霊スポット巡りと言うものはしたことが無い…。
ただ、ホテルセリーヌでは確かに嫌なものを感じた。
これから訪れようかと考えてる人が居るなら
『止めておけ』
と言いたい。
あそこにはきっと何かがある…。
これは作り話ではない。
確かに、私はあの時そういう体験をしたのだから…。