長野市郊外を走る国道19号沿いにはかつて営業していたパチンコ店「パチンコ新天地」の廃墟がある。店内はすでにパチンコ台も撤去され、荒れ果てた状態だったが一部の看板や設備は残されていた。
この場所には「首のない女性の霊が出る」という噂があった。工事関係者が夜間作業中に白い服の女を見たとか、肝試しに訪れた若者が金縛りにあったとか、いくつかの怪談がネット上でも語られている。
僕は友人2人と共に深夜に肝試しに行くことになった。建物の前に車を停め、懐中電灯の光を頼りに中へ入る。
店内は静まり返り、床には割れたガラスやゴミが散乱していた。天井からは剥がれ落ちた板がぶら下がり、壁には落書きが無数に描かれている。 どこからか水滴が落ちる音が響き不気味な雰囲気をさらに際立たせていた。
奥の部屋に進んだとき、突然「カタカタ…」と何かが動く音がした。
「今の、聞いたか?」
友人が小声でつぶやく。僕もうなずいたが、風で何かが揺れただけかもしれないと思い気にせず進んだ。
しかしその時だった。
「カタ…カタ…カタ…」
まるでパチンコ玉がレールの上を転がるような音が響いてきた。
「やばい、これマジでやばいんじゃないか?」
焦り始めた僕たちが出口の方へ向かおうとした瞬間、廊下の向こうに何かが立っていた。
白い服を着た女だった。
だけど、異様だったのは、
「首がなかった」
僕たちは恐怖で声も出せず、その場に立ち尽くした。女の影はゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「逃げろ!!!」
友人の叫び声で我に返り、全力で店を飛び出した。車に駆け込み、急いでエンジンをかける。バックミラーを見たとき、店の入り口に首のない女が立っていた。 まるで僕たちを見送るように…。
それ以来、僕たちは二度と「パチンコ新天地」には近づかなくなった。