これはまだ八王子中央病院廃墟があったころの話です。現在はリハビリ病院に建て変わっているので遊びにいかないよう気をつけてください。
10年以上の前の話になります。友達数人と肝試しをすることになり、当時は八王子の心霊スポットとして有名だった廃病院に行くことにしました。もともと霊の存在はあまり信じていなく廃墟を探索するくらいの軽い気持ちでした。
建物自体はだいぶ老朽化が進んでおり、窓やドアも壊れていたため容易に入ることができたのを覚えています。
中もやはりボロボロでしたが医療器具やベッドなどがそのまま放置してあり、手術室に入ったときはさすがに恐怖を感じました。
ただ心霊現象らしいことはなにも起きませんでした。たしか噂では勝手にカーテンが揺れる、電話が突然鳴り出すというようなものがあったと思います。
もちろん怖くないといえばウソになりますが、霊的な怖さというよりは真っ暗で何も見えない怖さを感じていたというのが正確でしょうか。
やっぱり幽霊なんて出ないなと外に出ました。するともう一つ建物があり、今度はそっちへ行ってみることにしました。
さっきの本館とは違いその建物には地下へ続く階段がありました。このときから全身がヒヤっとするような身震いを感じていたのを覚えています。
階段を降りていくと、さっきまでとは明らかに雰囲気が違う重々しいドアがありました。ふと「霊安室」という言葉が頭をよぎりました。
この部屋には入ってはいけない、そう直感的に感じました。それは僕だけではなく他のみんなも同じだったと思います。誰も動かず声をあげることもしませんでした。
シーンと静まりかえった空気に痺れを切らした1人が「開けてみようか」とドアに手をかけました。その瞬間、持っていた懐中電灯の明かりが消えました。
え?と思っていると今度はだれかが「なにか聞こえる!」と言い、もう1人も「中から声が聞こえる」と言い出しました。僕は耳をすませましたがなにも聞こえませんでした。
全員で顔を見合っていると部屋の中からドンッドンッ!とドアを叩く音が聞こえました。かなりの衝撃でドアに手をかけていた1人も「うわ!」と声をあげて手を離しました。
それと同時に全員でいま降りた階段を登り全速力で車まで走りました。運転手がエンジンをかけようとしますがなかなかかかりません。「早く早く!」と急かし10回ほどでようやくエンジンがかかりました。
そのあとどんな会話をしたかもう覚えていません。すぐには帰らずみんなで明るくなるのを待ってから家に戻ったはずです。
結局あの部屋がなんだったのかはわかりません。でも絶対に入ってはいけないなにかがあったのだと思います。