大学の友人と4人で肝試しにいったときの話です。
僕は怖がりなのであまり気乗りはせず「危ないからやめよう」と言っていました。だけど他の3人はノリノリで「怖いなら車で待ってなよ」と言われしぶしぶ行くことになりました。
僕が車を運転して馬首トンネルに到着しました。前述のとおり僕1人は車で待っていました。3人はスマホのライトで照らしながら真っ暗な道を歩いていきました。
しばらくするとスマホの明かりが見えなくなりました。
それから10分、20分と立ちましたがみんなの姿が一向に見えません。トンネルがどれくらいの長さなのかわかりませんがさすがに遅すぎるんじゃないかと心配になりました。
さらに10分が経過しました。車から降りて探してみようと思い車のライトをつけました。
するとトンネルの奥のほうから壁伝いにゆっくり歩いてくる3人の姿が見えました。ホッとしたのもつかの間、3人の後ろに人影のようなものが見えたのです。
3人は車のライトを眩しそうにしながら歩いてきます。僕は急いで車から降りて「早く戻ってこい!」と叫びました。
3人はおどろきお互いに顔を見合わせ急ぎ足で戻ってきます。「どうしたんだ?」と僕に声をかけました。
「お前らの後ろに誰かいたんだよ!気づかなかったのか?」と言いましたが、3人は「いや何もいなかったよ。俺たちの影でも見えたんじゃないか」と笑いながら答えました。
よくよく考えるとたしかに車のライトに照らされて3人の影が壁に写っただけのような気がしてきました。
自分だけパニックになったことが恥ずかしくなり「もう早く戻ろう。お腹すいたしラーメンでも食べにいこう」とごまかして車に乗り込みました。
運転席のドアを閉めます。バタン!
「そうだな、あそこのラーメン屋いこうぜ」と1人が助手席に乗り込みドアを閉めます。バタン!
続けて2人が後部座席に乗り込みます。僕の後ろのほうでバタン!助手席の後ろのほうでバタン!
そしてもう一度バタン!
ドアを閉める音が一回多く聞こえたような気がしました。だけど誰も気づいていません。
「どうした、早くエンジンかけろよ」
そう言われて僕はエンジンをかけて車を走らせました。
もしかするとまた僕の勘違いかもしれません。どうせまたバカにされるので誰にもドアのことは言いませんでした。
口に出すことが怖かったというのが正直な気持ちです。僕の車に知らない誰かが乗り込んだことを受け入れたくありませんでした。
ふとバックミラーを見ると後部座席の真ん中に黒い人影が見えたような気がしました。それからはなるべくバックミラーを見ないように運転しました。
やっぱり受け入れたくないので誰にも言いませんでした。
1人が「真っ暗なだけでそこまで怖くなかったな。こいつのパニック顔のほうがよっぽど怖かったよ」と言うとハハハと車内に笑いがおきました。
気のせいか笑い声が1つ多いように感じました。
どうやら5人で帰ってきてしまったようです。