西部公園の足元にある中学出身なんだが、部活の練習で西部公園まで走って登るっていうトレーニングをしてたんだ。そもそも西部公園の位置は結構山の中腹にあって春は桜も綺麗なんだが、そこから眺める徳島の景色もなかなか綺麗なんだ。
で、まぁ登りきったから最後はもう降りるしかないんだが、実は西部公園まで登るルートは2つあって一つは整備された道路(道の脇にはラブホが結構な割合である)を通るルート、そんでもう一つはトレッキングみたいなまんま山道を通るルート。
どっちもまぁしんどいんだが、後者のルートは山だけじゃなくて街も見えるし、しんどいトレーニングも気持ち的には楽かなと思ってその当時の俺とペアの子は山ルートから降りる事にしたんだ。
あれは夕方の6時くらいだったと思う。陽も傾いて、薄暗くなっていたから。俺とペアの子は毎回一番前を走るタイプだったんだが、その日は少し早めに降りたせいでかなり後続と差を開けて降り切ったんだ。
まぁそれ自体はそんなに悪い事では無いんだが、チームのメンバー全員揃えないと学校には帰れないし、どうするか相談した結果、もう一度戻って後続のメンバーと合流しようって話になって元来た道を引き返し始めたんだ。
と、戻り始めて数分もしない内に、坂の上の方で誰かが居るんだよ。俺達はメンバーの誰かだと思って「おーい!」って声かけながら坂を上がって行った。
そしたらソイツ、俺らから逃げるみたいにスーッて坂の上上がって行ったんだ。当時の俺達は多分中学生だったのもあるんだけど、なんか悪ふざけしてるみたいでさ、「待て待てーっ!」って追い詰めようとしてた。
こっからが本当に不可解だった。
こっちは上り坂だし、傾斜もかなりあるからなかなか上がれないんだけど、向こうは全く気にもしないようにスーッと上がっていく。このスーッてのが異常だった。
上がり方が、人のそれとは違う速さ。でも、人なんだよ。夕方だし周りが暗いのもあったと思うけど、シルエットは人のそれだったから。流石におかしいと思ってよくよくその影を見ようとしたんだ。ちょうど人影が街灯の下に入りそうだったから。
入った。おかしいんだよ。影のまんまなんだ。黒いシルエットそのまんまに、街灯の光がかかってまた地面に影ができてるんだよ。俺達は二人して「なんだよあれ」ってなってた。
そんで、その街灯の影がまたスーッて動いた。山のルートにちょうど差し掛かる所に作られた集団墓地の方へ、そんで消えていった…途端。
本当に今まで感じた事のないくらいの不気味さ、ココに居たら絶対にヤバいっていう気配。身の毛もよだつ、総毛立つそんな感覚で、どっちも叫びながら降りてった。
降り切って、二人ともざわざわ(なんかピリピリした感じ?)って感じが残ってる状態で呆然としてたら、他のメンバー全員降りて来たんだ。
そもそもルートは一本道だから、他のメンバーも見たに違いないって思って自分達が体験した事を矢継ぎ早に話す。でも後続のメンバーは誰も知らない。見てないの一言。
未だに訳のわからない体験でしたが、怖かったのを覚えています。でもそれ以上に体験して怖かったのが、そのペアの子、メチャクチャ真面目で正義感も強く、チームのエースだったんですが、異様な気配を感じた途端、俺を置いて全速力で山を降りて行ったの。
流石チームのエース。速い。じゃねえよ。どんどん開いていく差と後ろの異様な気配に絶望したのを覚えています。お前の事だぞ◯◯。という体験談でした。
昼頃は綺麗な景色の西部公園ですが、夜になると結構怖い体験をしている子もチラホラいました。まぁなるだけ夜は近付かない事をオススメします、と地元民から。