1971年7月30日に誰もが忘れることのできない大事故が起きました。岩手県岩手郡雫石町の上空を飛んでいた全日本空輸の旅客機「BOEING727」が航空自衛隊の戦闘機と接触して墜落。
戦闘機に乗っていた自衛隊員は無事に脱出できたが、旅客機は機体に受けた損傷が大きく空中分解。162名(乗客155名、乗員7名)が犠牲になりました。その犠牲者たちが空から降ってきた場所が慰霊の森です。
旅客機は物凄い勢いで地面に叩きつけられ犠牲者たちの遺体はバラバラに飛び散りました。どれが誰の身体の一部か分からないくらい損傷は酷かったようです。あちらこちらに肉片が散らばり凄惨な状況だったそうです。
これ以降、慰霊の森では数々の怪奇現象が目撃されるようになり県内屈指の心霊スポットとして有名になりました。
私がまだ大学生だったときに不思議な体験をしたのもこの慰霊の森でした。夏休みに友達と慰霊の森で肝試しをやろうということになりました。二台の車に乗り合わせ私の乗る車は後尾を走っていました。
肝試しに行くというより夜のドライブに近い感じだったのでみんなハイテンションでした。お菓子やジュースを持ち込み音楽を聴きながら車内は大盛り上がりでした。みんなで歌ったり、彼氏欲しいねみたいな話をしたり…。
ところが慰霊の森に近づくにつれ少しずつ車内の空気が重くなり始めたことに気づきました。次第にみんなの表情から笑顔が消えて空気がピンと張り詰めました。やっぱり肝試しは中止にして引き戻したほうがいいかもしれない、そんなふうに全員が考えていたと思います。
すると突然車内に流れていた音楽が大音量になり車のエンジンが止まってしまいました。何度もキーを回しましたがエンジンがかかりません。「ウソでしょ!」「なんで!」と車内は半狂乱状態。私は来たことを後悔しました。
先頭を走っていた車が私たちがついてこないことに気づき引き戻してきました。一人が車から降りてきたので事情を説明していたその時です。車のスピーカーから男性の低い声で『さっさと帰れ!』と聞こえたのです。あとから聞いたら先頭の車でも聞こえたそうです。
私たちは恐怖に怯え、肝試しを諦めて帰ることにしました。すると車のエンジンもかかりました。慰霊の森には近づいてはいけないと私の中で誰かが囁いたような気がしました。
それから数年が経ち、また慰霊の森へ肝試しに行こうという話になりました。あの時と同じメンバーですが今回は私を含めて4人だったので車は一台で行きました。
今回はエンジンがとまることもなく無事に慰霊の森に到着しました。しかしこの時は冬で雪が降っていたため、車のタイヤが雪に埋もれて出れなくなってしまいました。雪といっても積もるほどではなく普通に走ってこれました。それなのにタイヤが埋もれてしまうなんてちょっと不思議でした。
みんなで車から降りて、車を押してみましたがピクリともしません。しょうがないからレッカー呼んで帰ろうかと話をしていると突然車がスーっと動き出し雪から抜け出しました。私たちは怖くなり急いで車に乗り込んで引き返しました。
最初は気づきませんでしたが、途中で寄ったコンビニの駐車場で何気なく車の後ろを見ると2つの手形がついていました。まるで誰かが車を押したかのように右手と左手の形で。
みんなの話によると私がいないときは特に何も起こらないそうです。私が一緒にいるときだけ不思議な現象が起きて肝試しが中止になるとのことです。
何かが慰霊の森へ行くことを止めているのかもしれません。守護霊でしょうか。とにかく肝試しはもうやめようと思います。