世界新三大夜景に認定されている長崎県の中でも屈指の絶景を見せてくれる鍋冠山。デートスポットとして非常に人気があります。
数年前の秋頃、当時の彼女を鍋冠山公園までドライブに行きました。鍋冠山公園の夜景は噂通り、いやそれ以上に美しかったことを覚えています。展望台からの眺めに会話を楽しむこともなく、二人でその美しさに見とれていました。
秋とはいえ夜は肌寒く「そろそろ帰ろうか」と提案しましたが、彼女のほうが「もう少しいたい」と言うので展望台をおり、駐車場の近くにあるベンチに座りました。
そこから会話は弾まず無言の時間がしばらく流れました。「やっぱり寒いから車に戻ろうか」と声をかけると、彼女が聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で「いる・・・」と言いました。
言葉の意味がわからず聞き間違えたのかと思い「いる?」と聞き返しましたが返事はありません。「なにが?」と重ねましたがやっぱり彼女は黙ったままです。
どうすることもできずしばらく座ったままでいると突然彼女が立ち上がり駐車場のほうへ歩きだしました。
急いで追いかけて車に乗り込みエンジンをかけます。恐る恐る彼女に「どうしたの?」と聞いてみましたが「早く帰ろう」と言うだけでなにも教えてくれませんでした。そのあとは彼女を家まで送り解散しました。
次の日、彼女と電話で話したところようやく事情を教えてくれました。
近くにずっと黒い影がくっついていたこと。このままだと車までついてきてしまうから離れるのを待っていたこと。黒い影が見えなくなった隙を見て車に戻ったことを。
この世の者ではない者に見えていることを気づかれると執着されるから話せなかったそうです。
当時の彼女とはもう別れていますが、あの事件以降、鍋冠山公園に行くのは躊躇しています。夜景は綺麗なのでデートには最適なのですがやっぱり気が重くなります。